■#1 AsAKatEi nO hItoBItO
朝霞夏鈴、彼女は銀誓館学園の中学二年生であると同時に
中華飯店『朝霞亭』の看板娘でもある。
趣味も兼ねているため暇があればいつもチャーハンを炒めている。
通学路にある朝の朝霞亭に朝食を食べに来る人物は特に家族のように歓迎されるため
彼等を他の常連客は『朝霞亭の人々』と呼ぶのだ。
その中の一人、明石亨は最も長い常連客だ。
朝食を取るためでなく、幼なじみを遅刻させないためである。
「…朝霞!!時間だ行くぞ!!!」
そう叫んで朝霞亭の戸を開ける。
その時は決まって目の前に特盛の中華丼と幼なじみの笑みが待っているのである。
「……パイナップル入ってないか?」
「美味しくなるんだよ~?」
怒ったようなしかめっつらで亨は中華丼をひたすら食す。
彼は学習能力が無い訳でもない。
食べる時間も計算して来ている。
回りから見れば中華丼のパイナップルの味が無駄に出しゃばりそうな程甘い状況だ。
そんな二人を見守るのは朝霞亭の人々。
「いつまでやってて飽きないのかのぅ?」
お子様ランチを食べながら代わった口調でぼやく新楽音。
「楽音様、あれがあの二人の日常なのですよ…多分。」
社会的に妹として扱われている主人に意見する新明菜。
この二人は実家が奈良県にあるため朝霞亭に居候をしている。
昨夜の面は全員が朝霞亭の人々であるらしい。
そこで夏鈴に、来客してきた新しい顔触れが声をかける。
「カリンちゃ~ん、いつものチャーハン一つ大盛でね~。」
金色の長髪を首の後ろで結んだ外国風の青年、名はライオット・コネリー
チャラチャラした恰好のいかにもアメリカ育ちの優男だが
あまりに流暢な日本語を話しているため彼の語学力が確かなものだとわかる。
「私も、チャーシューメン一つお願い。」
もう一人は足元まで届くビロードのストレートヘアー、スタイルのいい肢体を隠すようにコートを羽織る美女。
名は安達・真央。
夏鈴は二人の注文に「ハーイ!」と答えパタパタと奥の調理場へ駆けていく。
早いやり取りに亨は口に含んだ中華丼を飲み込み、それを止めに入るのが遅れた。
「ブッ…ゴクン…オイッ!!…
お前等、遅刻するぞ?
てか夏鈴まで巻き添えにする気か!?」
亨は料理を置いて夏鈴を止めに行こうとするが、コネリーが肩を抱き寄せて言う。
「キョー君キョー君、慣れ切っているキミにはわからなくなっているのかい?
彼女の料理を毎朝食べれる幸せが。
料理と共に振る舞われる彼女の笑顔、この幸せを享受しようとは思わないのかい?」
「それにここの料理はこの辺の何処よりも安くて美味しいしね。
譲り合いの精神って大事よ?」
「だったらもっと早く来いこの遅刻魔共。」
亨はコネリーの腕を振り払い冷徹な返事を返した。
「はい、炒飯一丁に叉焼麺一丁!」
夏鈴が料理を並べた席に二人の高校生は「うわーい」と言って座る。
「早いな!」
そして全員が朝食を食べ終わり、代金を払うや否や
「行ってきます!!!」
その日の朝霞亭の人々六人、朝霞亭の戸を開けて亨を先頭に駆け出した。
道中、走りながら真央が亨に言った。
「あ、そうそう…昨夜の依頼の事だけどね…」
「…ん?」
真央はニッコリ笑って亨に告げた。
「これから暫く、他のチームの倍働いてもらうから。
これは団長指令よ。」
亨は真央の言葉を疑ったが、暫くして聞き返した。
「…なんで?」
「あの惨状を揉み消すのに学園も相当苦労してね
団長の私が責任とって君達働かせるから勘弁っていっちゃったのよ。」
亨は言い返すことが出来ない。
「次の結社活動の日を待っててね。」
真央は屈託のない笑顔で言い放った。
結社活動…倶楽部活動の代わりに銀誓館学園にあるシステムである。
能力者の集まりで、純粋にゴースト退治専門の結社がある。
私立銀誓館学園が鎌倉に設立された理由
それは鎌倉は地形の影響で銀の雨-世界結界の歪みから発生する超常の物質、詠唱銀を含む雨。
この詠唱銀が死人の強い思念を取り込んでゴーストが生まれる。-の降水量が少ないからだ。
しかし、それはあくまで少ないというだけである。
故に、日本中のゴーストが起こす事件に対応する銀誓館学園の能力者達の中には
鎌倉の内側で起きたゴースト事件を専門に解決する事に尽力する結社がある。
高レベルの魔弾術士である安達真央が率いる
亨達朝霞亭の人々も所属する巨大結社
それを『Ginsei Inside Ghost Sreiers』…
『GIGS』と呼ぶ。
PR